オバマが米大統領になったら
オバマかヒラリーか。
このオバマ対ヒラリーの大統領の民主党候補指名レースが始まってから、しばらくたってからだった、オバマがルオと関係があるってことを知ったのは。ハワイに留学していた大学院の後輩が、教えてくれた。オバマがハワイ出身だったからだろう、もっと早くからハワイでは彼のことが話題になっていたらしい。そう、オバマの母は合衆国カンザス州出身の白人、そして父はケニア共和国のルオ人なのである。
 しばらくして、ケニアのほうも大統領選挙が始まった。キクユ人のケニアッタのもとで独立して、その後もずっと、対キクユの意識がぬけないルオの人びとは、この2007年度の選挙ではいままでにない期待をしていた。政治家としての手腕をふるいつつも、大統領職にはつけなかった父をもつ、政治家2世のライラ・オディンガ。政治好きのルオの人びとはなにかといえば、選挙の数年まえから、ライラに勝ってもらわねば、われわれはずっと虐げられている、道路もひどい状態でも見放されていると口々に言っていた。
 選挙まえにルオランドに行ったら、みんなが誇らしげに言った。「ケニアも、そしてアメリカも、ルオ人大統領だ!」
 オバマかヒラリーか。それは合衆国にとって初の黒人大統領をだすか、初の女性大統領を出すかと、いずれもこれまでにない注目度がある。私は合衆国の政治についてはまったくの門外漢だけれども、なにか共通した傾向がケニアにもみられるように思えた。先日の5月24日に京都・龍谷大で行われたアフリカ学会の女性フォーラムでは、アフリカにおけるジェンダー、民主化がテーマで私もそれに参加し話をした。たとえばケニア共和国という国、また私がつきあっているルオの人たちにしても、エリート女性にしてもまず、2005年の憲法改正案へのリアクションにみられたように、改正法案がうたう女性の新たな権利の獲得(具体的には土地の相続権)にたいする共感よりも、利権の絡む閣僚職を自分の民族で固めるキクユ出身のキバキに対する反感が勝っていた。つまり、女性の権利拡大、というフェミニズム的思考よりもまえに、いわゆる「トライバリズム」、また合衆国でいうと人種問題やエスニシティの問題のほうが先行していると思われた。いまの時点での、雑感であるが。
 合衆国にしても、またケニアのこれからの動向にも、目がはなせない。ただケニアに関していえるのは、あのような暴動がおき、そして政府のその暴力的な対応にしても、まずは民族をこえた、人権という概念はまたたくまにどこかにいってしまった状況が起きたということ。あの狂気な雰囲気は3月に私が訪れたときはやっと落ち着き始めていたけれど、今度8月に行ったら、元のに戻っていてほしいと願う。
オバマのケニア人祖母

オバマ上院議員の祖母サラさん(中央で椅子に座る)を囲みながら、米大統領選民主党指名候補確定を祝い、「大統領になって、戻っておいで」と歌い、踊る親族ら=ケニア西部ニャンゴマ村のサラさん宅で、高尾具成撮影(毎日新聞:最終更新:6月5日15時2分)


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